路線価のついていない土地を無道路地として評価~知って納得! 土地評価の話~

相続税に関連する不動産の評価について、実例を交えてご説明している本シリーズ。今回の事例は、路線価のついていない土地の評価です。

相続税申告のカギとなる土地評価額の適正な算定

東京都にお住まいのS様はお父様を亡くされ、自宅敷地と建物、遊休土地、現預金など1億円程度を相続することになりました。相続人はS様おひとりだったため、ご自分で申告することを検討。ところが土地評価でつまずいてしまったため、当グループに相続税申告業務をご依頼されました。

判定が難しかったのは、路線価の浮いていない遊休土地。この土地の評価額の算定をご依頼いただきました。

私道には「特定路線価」を設定し評価するのが一般的

甲土地は行き止まり私道であるA道路に接しています。
原則として行き止まり私道には路線価がついていません。そのため一般的には、当該私道に「特定路線価」を設定し評価します。
ただし特定路線価は、あくまで「設定できる」権利です。
例えば、接している道路が建築基準法上の道路ではない場合は、特定路線価を取得する合理性を欠いており、評価対象地が接道義務を満たしていないため、「無道路地」として評価することになります。

「特定路線価」と「無道路地」では、相続税が大きく変わる

建築基準法では第42条で規定された道路を、建築基準法上の「道路」と定めています。該当するのは、幅4m以上の国道や県道、幅4m未満のいわゆるセットバック道路などです。それ以外は「法外道路」として、その道に接する敷地に建物を建築することは原則として許可されません。

無道路地は、実際に利用している道路の路線価に基づいて計算した価額から、無道路地に建築物を建築するために必要な、最小限の間口をもつ通路を開設する場合の価額を控除して評価するものとされています。
そのため「特定路線価」と「無道路地」では、相続税が大きく変わってくるのです。

接道が建築基準法上の「道路」ではなかった!

そこで私たちは念のため、区役所の道路管理課、建築指導課でA道路について調査してみました。すると、A道路は建築基準法上の道路ではないことがわかったのです。
さらにS様への聞き取りや登記簿の調査から、S様はA道路の持ち分を有しておらず、A道路には甲土地の所有者がそこを通行する権利である「通行地役権」も設定されていないことが判明しました。

このことから、甲土地はA道路を正面路線として特定路線価を付して評価するのではなく、B道路への通路を想定し、無道路地として評価するのが適正と考えられ、評価額は4,148万円と算定。さらに家屋や現預金などの評価も行い、相続税申告書を税務署に提出しました。

約2,000万円の評価額減で適正に相続税を申告

今回の申告作業をS様ご自身でされた場合、A道路に特定路線価を設定し評価を行っていたかもしれません。
特定路線価は、ほとんどが接する公道に付された路線価の9割程度です。ですからA道路の特定路線価は306,000円となり、甲土地の評価額は約6,000万円と算定されます。無道路地として算定した評価額は4,148万円ですから、2,000万円近く高くなり、結果的に、約600万円も余計に相続税を支払っていた可能性があります。
S様からは「適正な相続税申告ができてうれしい」と、お礼の言葉をいただきました。

相続による土地分割で生まれてしまう「無道路地」

S様によると、もともと甲土地と乙土地はひとつの土地だったものの、今回より前の遺産相続により2つに分割され、その後、乙土地が第三者に売却されて、甲土地だけ取り残されたとのこと。そのため、甲土地は無道路地となったのです。このような混乱を防ぐためにも、適正な遺産分割は重要といえます。

相続税は、相続開始時点の財産評価額を算定し、その総額が基礎控除を超える場合、原則として相続開始後10か月以内に、税務署に相続税申告を行う必要があります。基礎控除額は、3,000万円+600万円×相続人の数です。

相続財産には現預金、株式、家屋、土地などがあります。その中で最もウエイトを占めるのが「土地」ですから、土地の評価額の適正な算定が適正申告のカギとなるのです。しかし、評価が難しいために判断が分かれることも少なくありません。

適正な相続税申告のためにも専門家に相談を

今回のポイントになった、行き止まり私道に接している土地の評価。
宅地に接する道が行き止まり私道の場合、路線価がついているか、建築基準法上の道路か、通行地役権が設定されているかといった確認が必要になることがあります。
専門的な知識がなければ見落とされてしまいがちの土地の評価。適正な申告のためには検証が不可欠ですので、まずは専門家に相談してみましょう。どこに相談していいかわからない、という方は、「満室カフェ」へお気軽にお問い合わせください。

 

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フジ総合鑑定 住江 悠

株式会社フジ総合鑑定 大阪事務所 事務所長。不動産鑑定士。24年間で3,600件以上の相続税申告・減額・還付業務の実績を誇る、相続・不動産コンサルティング事務所で、公平な立場から不動産の評価を行う、相続・不動産のプロフェッショナル。