イエローゾーン(土砂災害警戒区域)の土地評価額減額事例~知って納得! 土地評価の話~

土地をお持ちのオーナー様に役立つ情報をお伝えするシリーズ、今回は「土砂災害警戒区域」の土地評価についてです。

土地が土砂災害特別警戒区域内なら確認を!
「特別警戒区域補正率」による土地評価額の減額

国税庁より、土砂災害特別警戒区域内にある宅地について評価減とする財産評価基本通達の一部改正が公表されています。具体的には「特別警戒区域補正率」の新設です。図1をご参照ください。

適用されるのは2019年(平成31年)1月1日以後の相続からですので、すでに適用が適用されます。そこで今回は、この2019年の改正内容についてご説明します。

「特別警戒区域補正率」の新設により、全体の地積(土地面積)に対する土砂災害特別警戒区域の地積の割合に応じて、この補正率を適用することで評価額が減額されます。
これまで財産評価基本通達には、土砂災害特別警戒区域の評価の規定はありませんでした。そのため、今後は相続した宅地などが土砂災害特別警戒区域内にあるのかどうか、確認が必須となるのです。

特別警戒区域補正率の表

土砂災害特別警戒区域とは

土砂災害防止法(正式名称「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」)では、土砂災害のおそれがある区域は「土砂災害警戒区域」に指定され、通称「イエローゾーン」と呼ばれています。
イエローゾーンの中でも、建物に損壊が生じ、住民等の生命または身体に著しい危害が生じるおそれがある区域は「土砂災害特別警戒区域」に指定され、通称「レッドゾーン」と呼ばれています。図2をご参照ください。

レッドゾーンでは、特定の開発行為に対する許可制や建物の構造規制、建物の移転等の勧告などが可能になります。そのため標準的な宅地と比べて市場性が劣ることから、相続税評価において、これらの要因を加味しようという背景が、この改正にあると考えられます。

なお、イエローゾーンについては評価の規定はないままですが、減額が全く見込めないというわけではありません。「利用価値が著しく低下している宅地の評価」(国税庁タックスアンサーNo4617)を適用して相続税還付に成功した事例もあります。

イエローゾーンの土地評価減額例

大東市のA土地は、ほぼ全域がイエローゾーン(土砂災害警戒区域内)にありました。
当初求めた評価は、路線価55,000円/㎡に地積280㎡をかけた1,540万円です。一方でA土地の東側にあるB土地はイエローゾーンの外ですが、A土地と同じ路線価55,000円/㎡で評価されています。

イエローゾーンは、土砂災害のおそれがある区域として警戒避難体制の整備等が進められる区域です。ところが路線価にはそのリスクが考慮されていません。
またA土地とB土地が同じ路線価で評価されるのは、課税の公平性から不適正と考えられました。

そこで大東市の固定資産評価基準を確認したところ、イエローゾーンおよびレッドゾーン内の土地は減価補正を行うこととされています。大東市へ聴取したところ、実際にA土地においても減価補正が行われていることがわかりました。

以上のことから、「利用価値が著しく低下している宅地の評価」を行うことが合理的かつ課税の公平に資するとして評価を改めたところ、適用後の評価額は1,386万円でした。
当初の評価額から154万円の減額となったのです。

 

相続した宅地がイエローゾーンにある場合は、相続税減額の可能性も

イエローゾーンの評価減については、固定資産評価基準の規定の有無や税務署によって判断がわかれるところではあります。今回は、そういった背景がうかがえる事例と言えるでしょう。

たとえばイエローゾーンであっても、レッドゾーンのラインからギリギリ外側にある土地の価格に対しては、土砂災害リスクの影響があるのではないでしょうか。
相続した宅地がイエローゾーン内、あるいはレッドゾーン内にある場合には減額の可能性がないか、セカンドオピニオンを受けてみることをお勧めします。

 

土地の評価額は、特に相続税に大きく影響します。土地評価はかなり専門的な知識が必要とされ、相続専門の税理士であっても、細かな土地評価までは難しいところがあります。
ご自身の土地の評価について気になる点があれば、一度「土地鑑定」の専門家に相談してみることをおすすめいたします。

「専門家がわからない」「相談する先を知らない」という方がいらっしゃれば、満室カフェを監修していただいている、信頼できる専門家にご相談することも可能です。
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フジ総合鑑定 住江 悠

株式会社フジ総合鑑定 大阪事務所 事務所長。不動産鑑定士。24年間で3,600件以上の相続税申告・減額・還付業務の実績を誇る、相続・不動産コンサルティング事務所で、公平な立場から不動産の評価を行う、相続・不動産のプロフェッショナル。