一体評価の土地を見直し相続税を還付~知って納得! 土地評価の話~

今回ご紹介するのは、相続した土地と使用貸借の土地を一体利用している場合の減額事例です。

S様は、お母様から相続したA土地とご自身が所有しているB土地を賃貸アパートの敷地としていました。下記の図2をご参照ください。
当初の申告ではA土地とB土地を一体評価してB土地の路線価による評価額計算をしていましたが、その評価方法は適正ではありませんでした。そこで相続したA土地について、詳しく調査したのです。

 

無道路地の評価を適用し、859万円の評価減

まず、A土地が接道する道路について役所聴取を行うと、北側および南側道路は建築基準法上の道路ではないことがわかりました。つまりA土地は、建築基準法上の道路に直接面していない、いわゆる「無道路地」だったのです。
無道路地は道路に直接面している土地に比べて利用価値が低くなることから、減額して評価します。ところが当初の評価は、無道路地に伴う減額が考慮されていませんでした。

A土地は市街化区域内にあるものの倍率地域に位置していることから、原則的には倍率方式での評価となります。倍率方式は、固定資産税評価額に評価倍率を乗じて評価額を計算します。しかしA土地は無道路地であるため、その限りではないと考えられます。
役所聴取で確認すると、A土地の固定資産税評価額はB土地と一体で評価して算出されており、A土地が無道路地であることが反映されていませんでした。そのため倍率方式ではなく、財産評価基本通達の「無道路地の評価」に準じて計算し直したのです。

評価額は、無道路地(A土地)の価額から、東側道路の接道義務に基づく最小限度の通路を開設すると想定して計算します。通路部分の価額を控除しますので、評価額は約3,138万円。約859万円の評価減となります。

これらを意見書にまとめて税務署に提出したところ、更正の請求が認められました。S様には、その他の土地の減額も合わせて約260万円の相続税が戻ってきたのです。

相続税の土地評価において、評価単位を誤ると評価額に大きな影響を及ぼします。
固定資産税評価の基準と、相続税の評価の基準は似て非なるものです。安易に固定資産税の評価の基準を鵜呑みにしてしまうと、相続税も過払いになるケースがありますので、ご注意ください。

 

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フジ総合鑑定 住江 悠

株式会社フジ総合鑑定 大阪事務所 事務所長。不動産鑑定士。24年間で3,600件以上の相続税申告・減額・還付業務の実績を誇る、相続・不動産コンサルティング事務所で、公平な立場から不動産の評価を行う、相続・不動産のプロフェッショナル。