複数の法定相続人がいる場合は要注意!
相続した不動産を売却する場合には、相続人に名義を変更する必要があります。ところが、法定相続人が多い、あるいは連絡が取れないなどの理由から、なかなか名義変更ができないケースも。さらに連絡が取れて名義を変更したとしても、売却できないこともあります。
複数の相続人で共有名義にした場合は、1人でも拒否すると売却はできませんので注意が必要です。
今回は不動産売却が思うように進まない、Aさんの例をご紹介します。
Aさんの実家には父親と祖父が住んでいましたが、2人とも亡くなり空き家になってしまいました。そこで売却を考え不動産業者に依頼したところ、祖父の名義であることがわかりました。不動産物件は死亡した人の名義では売却ができません。そのため遺産分割をして、相続人の名義にする必要がありました。
祖父の相続人は、Aさんの父親と伯父でした。父親はすでに亡くなっています。伯父と、その子であるBさんも亡くなっていますが、Bさんの妻であるCさんは存命です。このケースの相続人は、AさんとCさんでした。
ですからAさんとCさんが遺産分割について話し合い、相続人を決めて名義変更をすれば良いのです。
資産を有効活用するために、できるだけ早く名義変更を
Cさんは中国の方で、すでに日本にはいませんでしたが連絡先はわかりました。そこで連絡をしたところ、関わりを拒否されてしまったのです。外国人ということもあり、夫であるBさんが亡くなった際に本家とトラブルがあったようでした。金銭での解決も打診したそうですが「絶対に関わりたくない」ということで、とりつく島もありません。調停を行い日本に呼び出すという方法も考えられますが、おそらく難しいでしょう。
固定資産税はAさんが支払っていますが、このまま支払い続けても売却など有効に活用できる保障はありません。支払いをやめれば固定資産税の滞納ということになり財産は差し押さえられ、最終的には競売にかけられます。ただし相続人の1人であるCさんが海外に住んでいるため、登記が複雑ですので行政が放置してしまう可能性もあるのです。
この不動産は好立地にあるのですが、建て替えも難しい古い家屋ということもあり「このままでは空き家問題になりかねない」と、Aさんは不安を抱えています。
前回、不動産共有のリスクをご紹介しましたが、Aさんの場合も同様のケースです。家系が複雑だったこともありますが、名義変更を行わなかったために、すべての法定相続人が所有者になり、共有名義となってしまいました。
不動産の名義人が亡くなった場合、名義変更は非常に重要です。賃貸や売却など、資産を有効に活用するためにも、法定相続人の確認と遺産分割はできるだけ早く行いましょう。
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司法書士 飯田茂幸
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