毎年2月から3月15日にかけては、大家さんは確定申告で頭を悩ませていることでしょう。日頃きちんと整理をしておけば、間際になってあわてることはないのに……と思うのはいつものこと。なかには、奧さんとささいなことでけんかをしてしまうこともあるでしょう。
何年も自分で申告をしている方は、整理が十分されていなくても資料が整っていなくても、慌てず騒がず、まして家族に八つ当たりせずに、落ち着いて対処してください。
税務署の関心事は経費より収入のモレ
なぜか? アパートの所得は毎年そんなに大きな変動はありませんから。税務署の最大の関心事は「家賃収入」がもれているかどうかです。経費については、前年と比較して大きな変動があればチェックされますが、そうでなければ大きな問題にはほとんどなりません。
おそらく税務署は収入(家賃、権利金、保証金の償却)を調べるだけで、大半が終わってしまいます。よって、収入はもらさずきちんと申告してください。
保証金の償却は入居者が退去するときに、原状回復の費用として返還しない部分の金額は、いったん収入計上を必ずしてください。かかった修理費は経費として計上をするのですから。入居者がチェンジしたときに、この点はチェックされますので要注意です。
私用で購入したものを経費……ってあり?
ところで倹約家のスズキさんは、8月になってやっと自宅にクーラーを取り付ける決心をしました。夏の暑さがつらかったこと、長年使っていた扇風機がとうとう動かなくなってしまったこと、そして、決め手は安売りの電器屋さんの「閉店セール50%引き」の広告を見つけたことです。
スズキさんは絶好のチャンスと思いました。お店に行くと、あれこれ注文をつけました。「取り付け費用は、なんとかならないのか。部品を負けてくれ」。値段の交渉に入って店員から「価格は×××円で、それに消費税8%を加えますと×××円になります」と言われて、「その8%はなんとかならないのか」と交渉して、結局さらに8%引きにさせてしまいました。
お金を払う段階になって、スズキさんはさらりと「領収書の宛先はスズキハイツ、片仮名のスズキでお願いします」と告げました。自宅のクーラー代をスズキハイツの経費(?)にしてしまうと、スズキさんの場合は実質負担はさらに30%引きとなります。
こんな経費の使い方はやり過ぎですが、いかにも倹約家のスズキさんらしいエピソードです。でもスズキさんは、町内のお祭りや運動会となれば、10万円を平気でポンと寄付してしまうのですから人気者です。もちろん、スズキさんは領収書はもらいません。
本郷 尚 (ほんごう たかし)
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