「土地さえあればアパートは建てられます」
「お金は全部銀行が出してくれるから大丈夫です」
と言われて、その気になってアパートを全額借入金で建ててしまった大家さんは大勢います。
「借入金は税金対策になり、とくに相続税の節税になります。借入金の利息は経費になって、これも毎年の所得税対策になります」
と説明されて「そうか、節税になるのならいいかな……」。
そして「皆さんそうしてますよ」なんて、日本人の一番弱い言葉を添えられて、駄目押しされてしまいました。
“アパートを建てて節税”の意味
専門家として正直に言わせてもらいますと、借入金で建てても自己資金で建てても、相続税の税金は変わりません。要はアパートを建てると、建築価額と相続税法上の建物評価額に、約2分の1くらいの評価差があるから、アパートを建てると相続税の節税になるといわれているのです。
そして、土地の評価は、更地よりアパートを建てた後では、約20%下がります。借入金で建てるか、自己資金で建てるかは相続税には無関係なのです。それに、相続税が課税される人は節税を気にする必要がありますが、そうでなければ心配ご無用です。
所得税の節税は、あくまでも利息を経費にするのが主体です。具体的に言えば、仮に3,000万円を年3%の金利で借り入れしていれば、金利は3,000万円×3%=90万円を年間支払います。本人の所得税や住民税が20%であれば、節税されるのは90万円×20%=18万円だけです。結局90万円-18万円=72万円は支出しているのです。
借入金を早く返して身軽になろう
もし大家さんに手持ち現金があれば、借入金はどんどん返済してください。今は、定期預金にしていても利息はゼロに等しい時代です。借入金を返済すれば借入金の金利(仮に3%)はなくなり、預金を年3%で運用したのと同じになります。
全額が無理であれば、一部でもよいでしょう。さらには他の資産、例えば収入を生んでいない土地で活用が難しい土地があれば、売却して資金を作って借入金を返済してしまいましょう。返済すると、とにかくほっとしますから。
家賃が下落しています。建てたときには経済が右肩上がりで家賃は上昇するかもしれない、ということで計画されたこともあったでしょう。今は、いや、これからしばらくはデフレです。物価はもちろん、家賃も下がってきています。競争も厳しくなってきて、ときには空室になるかもしれません。
古くなったら、手を加えなければアパート経営は難しくなってきました。大家さんが今打つ手は、借入金はできるだけ早く返済して身軽になることです。返済すると今度は家賃が丸々手元に入り、預金が増えてきます。
最後に一言「皆さん返済してますよ」。これは“本当の話”です。
本郷 尚 (ほんごう たかし)
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