「顔と名前を出さないで、引っ込んでいて」~がんばれ、大家さん Vol.2

今どきの店子はドライです

部屋が空くと大家さんは、気が気じゃない。何しろ家賃が入ってこないのですから。毎月の家賃はサラリーマンの月給と同じですから、減額されたら大変です。
そこで、入居希望者が来たら、いや失礼! いらしたら、それこそ「ようこそいらっしゃいませ!」とばかりに、愛想を振りまきたい気持ちはよくわかります。でも、絶対にしないこと。余計なこと、ありがた迷惑です。入居者は大家さんに対して、マイナスの感情を持ってしまいます。
「だって自分が出て説明したほうが詳しく話せるし、それに今後お付き合いしていくうえで、お互いに理解しあうことは大事ではないのか」と思うのは大家さんだけ。ホンネを言えば、入居者は大家さんのつまらない顔なんて見たくもありません。「面接されるなんて、とんでもない、自分は家賃を払うお客さんだぞ。大家さんがどんな人物であろうと関係ないよ」と、内心では思っているのです。
もちろん、住むようになって、気が合えば付き合うこともありますが、今の時代ではほとんどないでしょう。昔の“大家と店子は親子も同然”なんて、若い人にとっては、まるで古典落語の世界です。
「そんなもんかな、寂しいかぎりだな……」。残念ながら今の時代、大家さんは顔を出さないほうが喜ばれます。まして、自宅の前、隣接して建っているいるアパートで入居者の出入りをチェックしたり、管理人よろしく宅配便の受付なんかされたのでは、入居者のプライバシーの侵害になってしまう。そんな余計なことをしてくれる大家さんだったら、入居者は「オー人事オー人事」のスタッフサービスに電話をしてしまいます。

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思いきって“名より実”を

ところで、大家さんのアパートの名前はなんですか。昔、Aさんが「若葉荘」とつけたら、友人のBさんが「だめだよ! そんなダサイ名前じゃ。せめて、グリーン荘でなくては」と言っていました。まさに目くそ鼻くその話です。でもね、この手の話はいくらでもあるんです。
例えば「ハイツ鈴木」「××田中」と堂々と大家さんの名前が入っているアパートの多いこと、多いこと。ちまたにあふれんばかりです。ここでも大家さんの無神経ぶりが現れています。
大家の鈴木さん田中さんは、無難なネーミングと思われるかもしれませんが、かんじんの入居者にとっては「かんべんしてよ」という気持ちでしょう。何しろ、ハイツ鈴木や××田中では、住所がまるで「鈴木様方、田中様方」と同じような感覚ですから。
こんなことを言うと「そんなに俺の名前が気に入らないか。名前が気に入らなければ、出て行ってもかまわないよ」なんていう大家さんがいそうですが、怒らないでください。
入居者は、やはり大家さんの名前の入ったアパートはいやなのです。
今さら名前を変えるといろいろ不便でしょうが、機会があれば、思いきって名前を変えるのも悪くはないでしょう。まるで、パチンコ屋さんの新装開店みたいに、変化があってもいいかもしれません。
要は、アパート経営では、なるべく大家さんは隠れていたほうがうまくいくのです。リフォームしたときなどが名前を変えるチャンスです。

大家さん、名を捨てて実を取ってください。

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本郷 尚 (ほんごう たかし)

本郷 尚 (ほんごう たかし)

税理士・本郷尚 日本における資産税の第一人者として、相続、贈与、事業継承、土地活用、財産管理を中心に活躍。各方面で講演・執筆等行い、著書も多数。株式会社タクトコンサルティング会長。 https://www.tactnet.com/