「これから増える自宅の賃貸化」~がんばれ、大家さんVol.31

定期借家契約の登場がきっかけ

大家さん、今回は「自宅の賃貸化」がこれから世の中に多く出てきますよという話です。大家さんのアパートのライバルになるかもしれませんし、いやむしろ分譲マンションや分譲住宅のライバルになるかもしれません。
自宅を貸す? そんなことがあるのかな? なんて思う人は多いはずです。他人に家を貸したら借地権が発生して、いざ自分が戻るとき、または売却しようとしたときに、どうにもならなくなってしまうのではないですか? という疑問を持つ人は多くいます。
しかし、心配ご無用です。今は賃貸期間を定めた「定期借家契約」がありますので、自宅も安心して貸すことができます。

高齢者には重荷な一軒家の維持

高齢化社会に突入しています。子どもが仕上がってしまった夫婦には、大きな一軒家が重荷になってきました。庭掃除、修理、雨戸の開け閉め、維持費もそれなりにかかります。
中高年の夫婦の生活に今の家が合っていないのです。ミスマッチなのです。
もちろん慣れ親しんだ家ですから、愛着と思い出はいっぱいあります。しかし、もし奧さんから「便利で快適な駅前のマンションで暮らしたい」「病院の側に住みたい」「子どもの近くに」「介護ができる家に移りたい」と言われ、その欲求が強くなってきたら、結局、わが家から離れざるを得なくなります。
今までも、転勤や療養で自宅を離れることはありました。しかしこれからは、中高年のなかから積極的に自宅を貸して、他の場所に移り住む人が出てくることでしょう。
家賃を受け取り、かつ家賃を支払う中高年です。大家であり借家人です。
デザイナーズアパート PRIMA

合理主義のアメリカでは当たり前

アメリカでは自宅を貸す人は多くいます。ある方はハワイに自宅がありますが、2ヵ月は自分が利用して、後の10ヵ月は賃貸して、その家賃を元に日本で暮らしています。その方の友人はハワイの家を貸して、2年間カナダの一軒家を借りて住んでいるとのこと。この話が特殊でもなんでもないことに驚かされてしまいます。
家具はほとんど置いています。個人的な荷物は鍵をかけて、そのままにしておくそうです。こうした管理を不動産会社がすべてやってくれます。
途中で所有している必要がなくなれば、売却をすることもあるとのこと。

ライフスタイルに合わせて移り住む

日本でも間もなく、自宅を貸す人が出てくるでしょう。中高年の人が自由に生きていきたい、どこか別の場所で暮らしたいという希望が強ければ、自宅を賃貸にと考えます。
まして親の家を相続した人にとっては、すぐに売却をすることもできず、空家にしておくこともできず、貸す人は必ず出てきます。
一方、入居希望者は大勢います。立派な一戸建てが手ごろな家賃で借りられるのなら、待ってましたとばかりです。現にマンションであれば、分譲マンションの借家は人気が高いのです。構造、環境、設備が充実し家賃も手ごろだからです。
こんな話をしていると、大家さん自身も自分の家を貸して、どこかに移り住みたくなってしまいませんか。

 

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本郷 尚 (ほんごう たかし)

税理士・本郷尚 日本における資産税の第一人者として、相続、贈与、事業継承、土地活用、財産管理を中心に活躍。各方面で講演・執筆等行い、著書も多数。株式会社タクトコンサルティング会長。 https://www.tactnet.com/