親が亡くなったときではもう遅い?
久しぶりに税金の話をしましょう。しかも有利な税金、節税の話です。
私はいつも「贈与ができるのなら、どんどんしてください」と言っています。相続で財産が子供に譲られても、「お父さんありがとう」という声は伝わってきません。贈与であれば生前にあげるので、感謝の言葉を聞くことができます。
贈与される子供も、早くいただけると助かります。いただけるのなら、できれば早いうちに……、ひとつよろしくお願いしたいというのが本音です。高齢化社会になると、80歳以上はもちろん、90歳、100歳まで生きるかもしれません。
親が亡くなったときに、子僕?が65歳以上ですと、財産をいただいてもちょっと遅いかなという気もします。
現金より有利なアパートの贈与
贈与するのであれば、一番簡単なのは現金です。今でも現行税制において、贈与税の基礎控除(1人当たり毎年110万円)を使いながら、子供や孫に贈与している方はたくさんいます。現金であれば手間も費用もかからず簡単です。
ところで大家さん、贈与でもっとも有利なものは何だか知っていますか? 「私が何かをもらえるのですか?」。イヤイヤそうではなくて、大家さんが子供さんや奥様にアパートを贈与することです。「何だ、私があげるのか」。そう言わずに聞いてくださいよ。
贈与税、相続税はどうなるか
仮に5,000万円で建てたアパートだとします。借入金はありません。家賃が年間600万円は入ってきます。このアパートはよく働く孝行息子です。
このアパートを子供さん(孫もOK)または奥様に贈与したとします。贈与税はどうなるかというと、5,000万円のアパートは、5,000万円で評価されるのではありません。
相続税や贈与税では、建物は固定資産税評価額で評価されます。大体購入価格の6割ぐらい、つまり5,000万円×60%=3,000万円です。さらにアパートは借家人がいますので、借家権(30%)を引きます。よって3,000万円×(1-30%)=2,100万円となります。つまりアパートは贈与税の評価では購入価格の約40%で評価されるのです。
約2,000万円の評価のアパートを奥様や子供さんまたはお孫さんに贈与してください。基礎控除の使い方で、複数や年度を工夫することはあります。贈与税は家賃が本人に入りますから、本人が払えます。
ここでは建物だけを贈与します。もちろん登記をしますので、登記費用や取得税等の費用や一部贈与税もかかりますが、それほどの金額ではありません。土地は、お父様に土地の固定資産税相当額を支払います。これを使用貸借といいます。
このアパートの贈与は単にアパートが贈与されたのではありません。アパートの家賃収益力(年間600万円)が贈与されているのです。仮に、このアパートがこれから先25年稼いでくれれば、年600万円×25年=1億5,000万円の家賃が渡ることになります。
今までお父様に入っていた家賃が子僕たちに入れば、子供たちの財産になります。お父様に家賃がたまると、お父様の財産がどんどん増えるので、相続財産がまた増えてしまいます。
大家さん、ご自身の相続税対策として、このアパートの贈与を考えてみてはいかがでしょうか。
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本郷 尚 (ほんごう たかし)
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