今回は大家さんの苦手な「数学」ではなくて、「算数」の話です。大家さんに限りませんが、一般の人は「大事な数字」には弱いのです。身の回りの数字は目先のことなので「細かい数字」はよく分かっています。
早い話が、スーパーで安売りしていれば、すぐ損得の計算ができてしまいます。大家さんであれば、家賃を安くするかどうかは、自分のことなのですぐに反応します。
ペイオフ実施でアパート建設が急増
ペイオフが実施されるにあたって、「預金しておくより、その資金でアパートを建てれば投資効率がいいや」という声が聞こえます。
5,000万円の預金の金利はほとんどゼロです。元金だって銀行に預けていてもペイオフであれば絶対安全ではない。アパートならば、5,000万円で建てれば家賃は年間500万円は確実だ。投資効率は、年10%だから投資として悪くない。土地はもともと所有しているので有利だし、株や他の投資と比べれば、アパート投資は自分の目で確かめてのことだから、安全確実だ。さらには、預金のままより、アパート(建物)だと相続税の評価が断然有利だものな……。
こんな具合に、現在、預金を取り崩してアパートを建てる人が増えています。
投資効率は本当に10%ですか?
ところで大家さん、5,000万円のアパートで年間500万円の家賃収入だから、投資効率は年10%だというのは本当だと思いますか?
残念ながら、それは違います。その説明をこれからしましょう。「算数」の話です。
家賃500万円、年10%というのは、建物5,000万円がずっと5,000万円のままでの話です。それはあり得ない話です。建物はいつか壊しますので、価格はゼロになります。
具体的に話しましょう。この建物からの家賃が一定で、10年経過したとします。500万円×10年=5,000万円となり、とりあえず建物投資額を回収したことになります。さらに10年または15年経過し、建築後25年で建物が老朽化して取り壊しました。
家賃の総額は500万円×25年=1億2,500万円でした。となると、1億2,500万円-5,000万円=7,500万円が利益となります。1年で換算すると、7,500万円÷25年=300万円です。投資効率は、300万円÷5,000万円=6%となります。この計算はきわめて単純に計算したものです。
投資効率は取り壊しまで入れて計算
「年6%は悪くない」と考えれば、それでもいいのですが、実際には経費や税金があり、家賃の下落や空室もあるので、この数字の実態は年3%ぐらいになるのではないでしょうか。マイナスばかりを並べましたが、家賃の上昇があれば率は上がります。
さらに取り壊さずに売却(土地も含めて)すると数字は変化しますが、これで「投資効率は10%」でないことは理解いただけたと思います。
投資効率を見るときは、単純に表面だけではなくて、投資対象が終了(売却または取り壊し)したときを計算に入れないと、本当の率は計算できないのです。
この考え方で、次回は不動産の投資についてお話ししましょう。
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本郷 尚 (ほんごう たかし)
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