相続税対策にはアパート経営が効果的です……ということは、ほとんどの大家さんはご存じですよね。財産を相続する人(配偶者・子供)にとっても、家賃収入がいただけるアパートは魅力的な財産です。
「もし、無借金のアパートで、年間500万円の収入があれば、働き手が1人いるようなものだ」と言った人がいましたが、なるほどなと思いました。手入れさえきちんとしておけば、文句も言わすにお金をしっかり稼いでくれますから。何やら男性に対して当てつけがましい気もしないではないですが……。
ある資産家の相続で……
ところで、最近の相続での出来事ですが、人気のアパートが現金に負けてしまいそうなことが起きたのです。
両親が亡くなり、兄と妹が相続しました。妹は他家に嫁いでいますので、自宅やアパートは兄が相続しました。妹は現金3,000万円を相続しました。アパートは時価にして3,000万円で、家賃は年間300万円ぐらいです。築10年ですが、借入金はなく鉄筋コンクリートなので、手を入れていけば、あと20年は十分稼いでくれそうです。兄夫婦(60歳と55歳)にとっては、確かにありがたい財産です。兄妹の相続ではこんなものかなと見ていましたが、兄嫁さんがふとこんなことを漏らしました。
「わが家の相続の現実を考えれば、これで仕方ないと思いますが……」と言いながら、「嫁の立場ではなんなのですが、義妹の現金3,000万円と比較すると、やはり割り切れません」。
その理由は、アパートが稼ぎ出す家賃年間300万円では、妹さんが相続した3,000万円の現金になるには15年ぐらいかかるのではないかと思っているからだそうです。単純計算では、300万円×10年間=3,000万円になります。しかし、維持費や税金、さらには現在価値としての3,000万円などを考えると、10年ではなく15年はかかるのかもしれません。
女性は“面倒なアパートより現金”
この兄嫁さんはなかなか計算に強い人です。一方の妹さんは、兄が自宅とアパートを相続するのは当然と考え、自分は現金を相続すれば円満な解決と考えていました。一時期、父から「アパートを妹に」という話がありましたが、妹さんは辞退したとのこと。そのときに、父から、「それなら妹には現金で」ということになったそうです。
妹さんは、現金3,000万円を相続して大喜びです。表向きは「兄が家とアパートを守ってくれれば」となっていますが、妹さんは、面倒なアパートよりいつでも使えるお金がありがたかったのです。
どうやら、女性2人の「アパートより現金」という価値観は一緒だったようです。だからといって、この2人がいがみ合っているわけではありません。
この辺の深層心理はお兄さんには分かっていないようです。
お兄さんは、「これでわが家の相続は無事に解決した。あとは自分がしっかりこの財産を守っていこう」と考えています。
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本郷 尚 (ほんごう たかし)
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