空室をきっかけに、経営の見直し
Aさん(60歳)は5,000万円(返剤期間30年)でアパート(8室)を建てました。最初の5年間は年間家賃600万円が確実に入ってきていたので、のんびりしていました。しかし5年後に2部屋が空室となり、その状態が3カ月続いたときには正直慌ててしまいました。返済に窮(きゅう)することはありませんが、手元に残る金額が大幅に減ってしまいました。その後に何とか家賃を下げて空室を埋めたものの、Aさんは真剣にアパート経営を見直し始めました。
一番心配になったことは、長期の借入金です。
5年経過をしているものの、元金はほとんど減っていないのです。銀行の返済明細を見て、博然(がくぜん)としてしまいました。5年間返済をしているつもりが、返済金額のほとんどが金利なのです。元金はほんの一部にすぎません。これを見てAさんは、気が遠くなってしまいました。
そこでAさんは、気を取り直して「借入金の早期返済作戦」を考えました。
Aさんの「借入金の早期返済作戦」
まず、返済の目標を、30年から10年に切り替えました。まずは金利の高い固定金利(年4%)3,000万円から優先的に返済することにしました。変動金利(5年間年2.5%)2,000万円は当面そのままにしました。
手元資金3,500万円のうち、思いきって2,500万円を返済に回しました。Aさんは、手元に1,000万円あれば何とかなると、心に決めたのです。2,500万円の金利が年間100万円減り、かつ当然返済金額が預金に残るので、1年間で合計200万円を返済に回せることになりました。5年間で1,000万円を返済してしまうのです。
5年後に3,000万円の返済が完了していれば、残りの変動金利2,000万円については、何とかなります。おそらくAさんは、2,000万円についても加速をつけてどんどん返済をしてしまうでしょう。すでに3,000万円の返済が終了していますので、家賃(年間600万円)の大半は手元に残るからです。
「すべてのお金に金利がつく」と実感
Aさんいわく、「返済計画を立てた瞬間から、お金を大事にするようになりました。すべてのお金に金利がついていることを実感し始めたのです」。
「例えば1万円の支出をするときにも、“このお金には1年で400円の金利がつくから20年で8,000円”なんて、ほかの人が聞いたら、守銭奴(しゅせんど)になったのかと思われるかもしれません。そんな気持ちになったことは、生まれて初めてですが、これも結構楽しいものですよ」
Aさんは、これだけではありません、家賃のこと経費のこと、すべてを真剣に見直したのです。さらにAさんいわく「今まで、いかに甘い経営者だったか反省しました。やはり大家さんであって、よきに計らえとばかりに何も考えずにやっていたのですね」。
「いやいや、最近のAさんのお話や考え、そして行動を見ていると立派な経営者ですよ」と言ったら、「借入金の返済が終わったら、自分をほめてやるつもりです」とAさん。還暦を迎えたAさんこそが、頑張っている大家さんです。
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本郷 尚 (ほんごう たかし)
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