「退去時の費用負担は大家さんに」~がんばれ、大家さんVol.45

退去時の費用負担がトラブルに

最近目立ってトラブルの多い事例として、アパートを退去するときの費用負担に関することがあります。従来は立ち退くときに、修復するための費用はあらかじめ預かっていた敷金から差し引く慣行がありました。
しかし、最近では、借り主の原状回復の義務について、国土交通省から「ガイドライン」が発表されました。これによると、借り主の負担する項目は、①引っ越し時のひっかき傷、②家具の移動による床の傷やへこみ、③結露を放置したことにより拡大したシミやカビ、④照明器具の跡、⑤くぎ、ネジによる壁の穴等々と具体的に明示されています。
一方、大家さんの負担は、①畳の取り替え、②壁に張ったポスターや絵などの跡、③画鋲(がびょう)などによる壁の跡、③耐用年数を過ぎた設備器具の故障等々、これまた具体的に列挙してあります。

敷金は退去時の「原状回復」費用?

もともと敷金を事前に預かる目的は、家賃の未払いや、債務不履行による損害賠償に備えたものです。借り主が退去するときには、本来返還すべき性質のものであったはずです。しかし、従来は退去時に「原状回復」の費用として、事実上相殺して返還はほとんどしていませんでした。特に関西方面では、契約当初から「敷引き」と称して、敷金の一部を返還しないという特殊な契約が慣行化していました。
しかし最近では、退去時の費用負担については、自然な損耗(そんもう)は大家さんが負担し、借り主が故意や過失により損耗した場合に限り、借り主の負担となることが明確になってきました。
法律的な議論をすると、細目にわたるのでこのぐらいにします。いずれにしても、今までのように、借り主に負担してもらっていた「原状回復」費用は、どうやら大家さん負担になってきたようです。

大家さん側の費用軽減対策

大家さんは、これからは原状回復費用をいかに安くするかの工夫を考えなければなりません。そこで借り手市場として厳しい現状にある北九州市のリポートを参考にしてみましょう。
① 合い見積もりによって費用を確かめる
業者任せではなく、複数の業者から見積もりをとって費用を確かめる。
② 入居者に住まい方を注意しておく
落書き、イタズラで部屋を傷めないこと。言っておくとそれなりの効果はあります。
③ 小さい修理は自分でやる
器用な大家さんなら、結構自分でやる。こうすると、愛着を感じます。
④ 硬質な床材を採用する
さまざまな種類がありますので、傷まない床材を選ぶと効果は抜群です。
⑤ 壁クロスの張り替えを減らす
クリーニングで済ませられるクロスを使う。腰の高さまでとそれより上に別々のクロスを使う。
こうした工夫は一見地味なようですが、チリも積もればそれなりの金額になります。さらに一番大事なことは、こうした努力の積み重ねで、大家さんが「経営者」になっていくことです。原状回復費用が大家さんの負担になっていくのは仕方のないことです。むしろ与えられた現実に立ち向かう姿勢を築いてください。


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本郷 尚 (ほんごう たかし)

本郷 尚 (ほんごう たかし)

税理士・本郷尚 日本における資産税の第一人者として、相続、贈与、事業継承、土地活用、財産管理を中心に活躍。各方面で講演・執筆等行い、著書も多数。株式会社タクトコンサルティング会長。 https://www.tactnet.com/